『源氏烏帽子折』第五段

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源氏烏帽子折

 第五段

源頼朝は、伊豆の蛭が小島で、平家追討の企画を企て、関東の諸大名と、計画を練っていました。
そこへ、金王丸が、やってきました。
「都では、平家が好き放題やっており、早く攻め滅ぼしてくれないかと、みな祈っております。
牛若殿は、御供を連れて、伊勢神宮に参詣してからこちらに参ります。
私は、土産に持参した生肴が、悪くなる前にご覧頂こうと、一足先に参りました。」
と、長田忠致を差し出しました。
頼朝は、「父、義朝の命を奪った、憎い毒フグか。」と、
愉快そうに笑いました。そして「すぐに、料理せよ」と言って、長薙刀を金王丸に渡しました。
金王丸は薙刀を手に取ると、小躍りをし、首をすぱっと斬り落とし、宙に放り上げて、刃先でそれ
を受けると、頼朝の前に差し出しました。
ようやく父の仇をとることができた頼朝は大変喜びました。
 

さて、その頃、牛若は東雲を連れて伊勢参宮に出掛けておりました。
伊勢神宮の寝殿は神々しく、境内には百二十を越える小さな社があります。
牛若丸は、次々と社を巡るうちに、神々の全ての源となるのが、この伊勢神宮であることを思い、
五十鈴川の静かな流れに、この世が、末永く続くことを祈って、幾度もお辞儀をするのでした。
そこへ軍勢を引き連れてやって来たのは頼朝の側近盛長です。
「牛若殿、お迎えにあがりました」
牛若は、喜びさっそく、外宮・内宮の祈祷師を呼び、太々神楽を捧げました。
雅楽の音色が、怒りや、恨み、憎しみの心を清めるように、やがて白い雲が立ち上り、源氏の白旗のごとくに光り輝き、長く棚引いていました。
雲の中から伊勢・石清水、住吉の三社の神様が現れ、
「源氏の未来は、万々歳。五穀豊穣、国民の幸せを願い、国土が豊かになるよう守り続けなさい」
と、弥陀・釈迦・観音三体の、ご本地の姿となりました。
牛若は、歓喜の思いで神前に祈りを捧げました。
 
やがて、神様の予言通り、源氏軍は、平家を討伐しました。源氏も国も栄え世の中に平和が訪れ皆が喜びました。