『酒呑童子・大江山』第五段

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酒呑童子・大江山

 第五段

一同は洞窟の中を進みました。ある姫は、岩の中で、腕と足を切られ真っ赤な血で染まっていました。
頼光は、そっと近寄り「大丈夫ですか 姫君。みんな、都に帰ります。一緒に参りましょう」
と、声をかけますが、かわいそうに途切れ途切れの声で「私には、もう都に帰る力は残っていません。せめて、都で心配している父母(ちちはは)に私の黒髪を形見としてお渡し下さい」
そして「親より先に、子の私が死んでしまう親不孝をお許しくださいと伝えて下さい」と涙なが
らに言いました。
あまりにも可哀想な姿です。
頼光は、「心をしっかりお持ちなさい。必ず約束はお守りしますからね」と言うと、
再び立ち上がり、酒呑童子の寝床へと急ぎました。
しばらく進んで行くと、鉄の扉に銅で作られた大きな鍵がかけられた部屋の前に来ました。
鉄格子の隙間から見ると、ろうそくの明かりに照らされた、酒呑童子の姿が見えました。
大きな図体手足は熊のようです。

髪は赤く、眉毛はぼさぼさで、横たわる姿は、身の毛がよだつほどでした。
敵を目の前にしながら、困っていると、再び神様たちが現れ、「安心なさい。酒呑童子の五体は、
八方につながっている。頼光はまず、童子の首を切り落としてしまいなさい。
残りの者は、手足や五体を、一斉に切り離すのですよ」と告げると門を押し開けて姿を消しました。
一気に、寝床に押し入ると、酒呑童子は何ごとかと目を覚まし山も崩れるほどの大声で、「山伏め、図りやがったな」と、わめき散らしました。
頼光は、刀を振り上げて即座に首を切り落としました。
家来たちも、手足や胴体をずたずたに切り裂きました。
その時、酒呑童子の切り離された首が、頼光を目がけて飛んで来て星兜に食い付きました。
家来たちは、その首を切り払い落としました。
神様がくれた星兜のお陰で頼光に怪我はありませんでした。
次から次とかかって来る鬼たちを六人は残らず成敗しました。
そうして、一行はさらわれた姫たちとともに酒呑童子の首を都へ持ち帰りました。
都の人々も大変喜びました。
それ以降、この国の人々は、みな幸せに暮らしたということです。
めでたし、めでたし。
 
 
 
                                                                                                          おしまい。
 

 

 
 
 

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