『大職冠』初段

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大職冠

 初段

藤原一族がたいそう栄えていた時代のお話です。
鎌足の娘、琥珀女は大変な美人で海を隔てた中国にまで、その噂は届いておりました。
中国の高宗(こうそう)皇帝は、日本に使者をたてると、鎌足公の許しを得て
琥珀女(こうはくにょ)を后に迎えたのでした。
ある時、后が日本にいる父 足に贈り物をしたいと言いました。
皇帝は、さっそく后を連れ蔵へと向かうと三つの宝を選びました。
その一つに、面向不背の玉と呼ばれるどこから拝んでもお釈迦様が、すべて正面に見える水晶の玉
がありました。
皇帝は日本へこれらの宝物を船で送るため、雲州国(うんしゅうこく)の万戸将軍という大変な強者を
使者に選び日本へ向かわせました。

 さて、ここは海中に住む竜王の館です。
竜王は日本に宝が贈られる噂を聞きつけると、一族を集め、面向不背の玉を奪いとるための作戦を
立てていました。
竜王は、争いごとが、大好きな仲間の修羅王とその家来らを天空から呼び寄せると先回りをして万
戸将軍らの船を待ち伏せすることにしました。
 
万戸将軍一行が、日本と中国の境に近づいた時、突如、稲妻が起こり雨が激しく降り出します。
こつ然と、島が浮かび出て、おびただしい数の矢が、こちらを狙っているのが見えました。
やがて、「私は、修羅王である。玉を渡せ。」と言う声が天まで響き、次の瞬間
大きな石や刃物が雪玉のように飛んできました。
万戸将軍はビクともせず、鎧兜に身を固めると、馬にまたがり、悠々と戦い続けました。
ついに「とてもかなわぬ」と、一目散に逃げ出す修羅王に剣を振り上げ、
首を跳ねると、しぶきを上げて海に沈んでいきました。
それを見た家来らは、恐れをなし急いで身を返し逃げていきました。